DS2が発表されたのもあって年末年始はデス・ストランディングを遊び直したりしていました。
2周目プレイしたり、プラチナトロフィー取ったり*1、フォトモードで遊んだり……。
このゲームのフォトモード楽しいですね。
きれいなロケーションが多いゲームなのでPS4版発売当時にフォトモードがなかったのもったいなかったなと思います。コストや優先順位の問題で難しかったのかも知れませんが。*2
デススト、序盤はわけわかんねーし中盤以降はネタバレ云々でストーリーに言及しづらくゲームプレイの楽しさも独特で上手く言語化して人に伝えるの難しいし口コミでの広がりに関しては弱いところがあったと思うのでプレイヤー経由の露出を増やす意味でも発売当初からフォトモードがあったらなあみたいな
— NIX (@NIX_51) 2023年1月15日
さて、発表されたDS2関してですが小島秀夫がSpotifyのポッドキャストで
- DS2はDS1を作っている時にすでに考えていた。
- 1作目を作りながら続編をイメージしていて、お話も細かいところまで頭の中にあった。
- 発売後にコロナ禍があり、シナリオを全部書き直した。
- 「我々は繋ぐべきだったのか?」が今回のテーマ。
- 前作は縄のゲームとして分断している孤立している人たちを繋いでいくことが正義だったがそんな中でコロナ禍があって、じゃあこれからどうなるのか?という部分に触れているのがDS2。
と語っています。(23分24秒~)
1作目を作っている最中から続編の構想があったということはスティルマザーの存在など1作目で具体的に触れられなかった部分が続編への布石であった可能性が出てきます。
作中で語られていたようにカイラル通信の端末にはBBが組み込まれていました。作中に出てくる通信端末だけでも結構な数の”人柱”が必要なはずですが、作中でアメリの口から「都市では少しずつ人の数が減ってきている」「子供も産まれなくなってきている」と語られています。そうした状態で脳死状態の妊婦がそう都合よく見つかるとも思えないわけで、BBの製造過程及びスティルマザーの確保にはかなりの非人道的な手段が取られているのでは?と察することが出来ます。実際デスストランディングのアート本のスティルマザーの初期イメージを見ると、あくまでもゲーム制作中の初期イメージであることに留意が必要なもののBBの製造過程においてブリッジズがかなり真っ黒な組織であることが伺えます。
ところでだいぶ前にTwitterで以下のような意見というか所謂「考察」を見かけました。
- 脳死状態で生命維持装置に繋がれてる人間の頭を撃ち抜いたところで本当に即死するの?
- ところでデッドマンは当初ルーの母親としてリサの名前を上げていなかった?
要するにリサは死んでおらずブリッジズに”BBの製造装置”として利用されているのでは?という仮説です。
正直あまりにも人でなしな設定なのでこれは違っていて欲しいなと思い、この説を否定する材料を探す目的もあり2周目をプレイしていたところがあります。その結果ですが確かにサムがBBの実験体であったことが判明する前の段階で"BBの母親”としてリサの名前が出てきてますし、サムがBBとして使えなくなった理由も「スティルマザーが死んだから」ではなく「あの世との臍帯が切れたから」と語られていました。
うーん……。
次に「コロナ禍があり、シナリオを全部書き直した」「『我々は繋ぐべきだったのか?』が今回のテーマ」という点について考えてみます。
デススト作中では謎の現象「デス・ストランディング」により人々が都市やシェルターに閉じこもり孤立した世界が描かれましたが、発売直後にコロナ禍となり外出自粛や移動制限、人との接触の制限がなされ奇しくも現実世界が同じ様な状況になりました。コロナ禍で実際にみんなが引きこもり、デススト作中のカイラル通信のようにインターネットで繋がって何が起きたのかというと反ワクチン、Qアノンのような陰謀論の蔓延、アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件だったりしたわけです。
「インターネットは脳の最悪の衝動を煽り、それを無数の人間に広めて、このプロセスを過熱させる。ソーシャルメディアはユーザーを、彼らの見解の一つ一つが広くシェアされるように思える世界にいざなう。ほかの人間も自分と同じだと思わせる。いったんグループができれば、同類性の力によって結びつきはさらに緊密になる。元米陸軍大佐で歴史家に転身したロバート・ベイトマンが的確に要約している。『かつては村ごとに愚か者がいた。インターネットが彼らを一つにした』」
P・W・シンガー,エマーソン・T. ブルッキング著『「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア』(NHK出版、2019年)
リンク
自分はデススト発売当時、面白いことは面白いけれどMGS2の小島秀夫が2019年に改めて作ったインターネットに対する批評としては物足りなさを感じていたのですが、作ってる最中から続編を考えていたのであればPWのあとMGSVのように続編で”繋がる”ことの負の側面が描かれていくことになるのかも知れません。
前作の組織の名前があちらとこちらを繋ぐ橋”BRIDGES”だったのに対してDS2では必要に応じて繋がりを断つことのできる跳ね橋”DRAWBRIDGE”というのも面白い点です。
DRAWBRIDGEの船の船名と思われるDHV MAGELLANですが航海士のフェルディナンド・マゼランから取ったものではないかと考えています。史上初の世界一周航海で知られ、マゼラン海峡の名前の由来となった人物です。しかしながら、彼の率いていた5隻の船のうち1隻は確かに世界一周を成し遂げたものの、彼自身は航海の途中で殺されています。
「マゼランはマクタン島の人々にキリスト教への改宗を求め、現地の族長だったフマボンとラプ・ラプの争いに巻き込まれた。1521年4月27日、マゼランはラプ・ラプと住民たちを攻撃した際、毒矢で殺された。」
前作で米国の歴史をなぞるように北米大陸を東から西を横断した流れで、次にどこに向かうのかといえばアメリカの外と考えるのが順当ではないかと思います。マゼランのフィリピンで現地の人々に対しキリスト教への改宗を要求した結果殺されたエピソードを考えると、DS2はカイラル通信のシステムをアメリカの外に"輸出"しようとして何かしらのしっぺ返しにあう……みたいな話になるのかも知れません。やや安直かも知れませんが。何にせよ前作でのアメリゴ・ヴェスプッチに続いて非常に小島秀夫らしいチョイスな気がしますし、またアメリカ覇権主義の話になるんじゃなかろうかという気がします。マゼラン自身はアメリカ人ではありませんが。
とまあ色々と書き散らしましたが、実のところ自分はデスストのディレクターズカット版追加エピソードを遊んでいないんですよね。なのでてんで見当違いなことを長々と書いただけかも知れません。
……はい、ということでね
*1:デスストのプラチナトロフィーは何か高度なプレイヤースキルが求められるわけでもなく、ただひたすら時間がかかって面倒くさいだけなので達成感もなければ自慢にもならないしただただ徒労感があるだけでした。トロフィーとか実績、あると取りたくなったりしてしまってゲームが純粋に楽しめなくなるので切実に滅んで欲しい……。
*2:インタビューによると検討はしていたもののここまでフォトモードがSNSで盛り上がるとは考えていなかったみたいです。「だから当然、デス・ストランディングでもカメラ機能の実装は検討していましたが、僕自身そこまで必須の機能とは思えず、発売時には入れていませんでした。ただ、美しい風景を撮影したいというプレーヤーの声を受け、フォトモード(編集部注:時間が一時的に停止し、好きな画角で撮影できる機能。フィルターなどを調整することで、多様な作品を生み出せる)を盛り込みました。そこからは、僕の予期しない盛り上がり方をしています。景色を撮影するのかと思っていたら、すごい凝った写真が続々とSNSに投稿されるようになりました。主人公に様々なポージングをさせたり、ストーリー性があったり、想像を超えていっています。30年以上もゲームをつくっていますが、ゾクっとするカットショットも生まれています。今までにない喜びですね。」