スパイダーマンの生みの親であるスタン・リーは生前インタビューで
「頭からつま先まで、すっぽり覆うスーツにしたのは正解だったよ。誰もがスパイダーマンになれる。アフリカ人でもアジア人でもインド人でも、あのスーツを着てスパイダーマンになった姿を想像できるんだ」
と語ったことがあるらしい。らしいというのは上記が映画『スパイダーマン:スパイダーバース』パンフレットのコラムからの丸々孫引きであり、原典のインタビューがどこのものだかわからないからだ。(知っている人がいたら教えて欲しい。)
スパイダーマン:スパイダーバース プレミアム・エディション(初回生産限定) [Blu-ray]
確かにアベンジャーズのメンバーを見てみても顔を完全に隠しているヒーローは意外と少ない。正体を隠したままヒーロー活動を行っているものとなるとなおさらだ。社長だったり、一国の主だったりではなく、普通の若者がプライベートで学業や仕事、恋愛などの卑近な悩みを抱えながら顔を隠してヒーローをやっている。それ故に感情移入がしやすい、そこがスパイダーマンの魅力の一つなのだろう。
スパイダーバースは「”それが正しいことだから”という理由だけで誰かのことを助けられる人こそが”真のスーパーヒーロー”であって、そこには人種も性別も色も種族すらも関係はなく、覚悟を決めマスクを被れば誰だってスパイダーマンになれる」という映画だった。そしてPS4の『Marvel’s Spider-Man』は正に「プレイヤー自身がスパイダーマンになれる」、そんなゲームだ。
『Marvel’s Spider-Man』の話がしたい
『Marvel’s Spider-Man』の話をするならまず移動の素晴らしさを語っておきたい。本作のウェブを使った移動は本当に楽しい。ただ単に「移動が楽しいゲーム」は今までにもたくさんあったが移動自体は楽しくはあるものの単調ですぐに飽きたりすることも多かった。その点『Marvel’s Spider-Man』の移動はスイング、ウェブ・ジップ、ポイント・ジップ、ポイント・ジャンプを適所ごとに使い分ける必要があってそれによって単調になりづらくなっており、よく工夫されている。それらをうまく使いマーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン2』冒頭シーンのようにスパイダーマンをカッコよく思い通り縦横無尽に動かせたりすると本当に気持ちがいい。単なる移動が一種の魅せプレイになるのだ。
移動をする舞台の街そのものも非常に良くできている。タイムズスクエアやエンパイアステートビル、セントラルパークといったニューヨークの観光名所がかなり忠実に再現されており、そうした観光名所を見て回るだけでも相当に楽しい。
PS4のMarvel’s Spider-Man、ニューヨークの街並みを見事に再現しているのでニューヨークで撮られたB'zのPVの再現ができる。 #Bz2019 pic.twitter.com/3hvp74yy1w
— NIX (@NIX_51) April 9, 2019
こういう遊び方もできる。
実際の街とゲームとの比較はこの辺の記事を見るとゲームがいかに良くできているかわかる。
ゲーム中のニューヨークには実在の建物や公園だけでなくアベンジャーズタワーやドクター・ストレンジのサンクタム、ブラックパンサーのワカンダ大使館、『スパイダーマン:ホームカミング』にも登場したダメージコントロールなどのイースターエッグも大量に含まれている。
セント・パトリック大聖堂近くのビルの屋上には『スパイダーマン』(2002)で初めてスパイダーマンがMJと会話をする場所が再現されている。
街の住人たちもゲームの魅力に一役買っている。街角やゲーム中のSNSでときに罵倒を浴びたり称賛を受けたり、JJJのポッドキャストを聞いたりしたり。通行人とハイタッチや握手をできるのも”親愛なる隣人”ならではだろう。
また収集物として街のあちこちに落ちているアイテムの説明文を通してスパイダーマン活動を始めてからのピーターの歩みやMJとの関係が語られるのも良い。
こうして観光したり、ニューヨーカーと触れ合ったり、SNSを覗いたりして、プレイヤーがゲーム中の街と人に思い入れを持ってきたあたりで、ヴィランが暴れまわり街がめちゃくちゃになったりする。この辺のストーリー展開もプレイヤーの感情の持って行き方が非常に上手いなあと感心してしまう。中盤のピーターが打ちのめされる展開は自分のことのように胸が苦しくなった。
今作オリジナルのスパイダーマンのスーツのデザインも非常に良い。スニーカーのようなソールや胸の蜘蛛マークと手の甲の白い素材など、明確に「走って、跳んで、人を殴る服」としてデザインされているのがたまらない。こうしたディテールが今作のフォトリアルで現実味あふれる世界観に絶妙にマッチしている。
殴るといえば今作は戦闘もかなり楽しい。ステルスで一人ひとり倒していくのも良いし、正面切って戦うのもそれはそれで楽しい。ガジェットを使ってギャングたちを文字通り一網打尽したりするのがなかなかに爽快だ。
そして何よりさっきから貼っているフォトモードで撮った写真も本作の大きな魅力のひとつだ。ニューヨークの街で風景写真を撮るのも良し、戦闘中にかっこいい写真を撮るのも良し、手に入れたコスチュームで写真を撮るも良し。とにかく楽しい。
このゲームは本物のゲームなのでスパイダーマンがスーツを着ている時と下着姿のときで足音が違う。(裸だとなんだかペタペタという)
色々と良いところを挙げてきたが、このゲームにも不満がないわけではない。特に日本語へのローカライズ関係で英語音声日本語字幕が選べなかったり、街のガヤの一部が日本語音声になっていなかったりするところは非常に惜しい。また、英語音声では移動中と止まっているときでスパイダーマンのセリフの抑揚や息遣いが異なっていたりと非常に細かいこだわりが見えるが日本語音声ではそうなってはいない。
Today in Ridiculously Polished Video Games: Spider-Man seamlessly switches between two different vocal takes depending on whether or not he's exerting himself pic.twitter.com/3KRXOZnihU
— Kirk Hamilton (@kirkhamilton) September 8, 2018
逆に言えばそんなローカライズ関係くらいでしか不満点はない。PS4の売上記録を数多く更新する大ヒットということでヴェノムやゴブリンといったヴィランの登場する続編が作られることにも期待したい。
【PS4】Marvel's Spider-Man Game of the Year Edition
S.H.フィギュアーツ スパイダーマン アドバンス・スーツ (Marvel's Spider-Man) 約150mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア